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<レジャーレポート>コロナ禍で急成長したボートレース市場の考察

 コロナ禍を経てボートレースの売上規模が拡大している。2016年頃から市場拡大の傾向があったが、特にコロナ禍となった2019年から2021年にかけての増加率は他の公営競技と比較して圧倒的なものがあり、売上高は中央競馬には及ばないものの競輪には大きく水を開けることとなった。いったい、その要因はどこにあるのだろうか。

 全国モーターボート競走施行者協議会の発表によると、バブル崩壊以降減少を続けてきたボートレースの売上高は、2007年から回復基調となり、その後は9000億円でほぼ横ばい状況が続いていた。変化の兆しが見え始めたのは2015年頃からで売上高は1兆円に到達。コロナ禍直前の2018年には1兆3000億円台まで拡大したが、2019年には新型コロナウイルス感染症が流行し始め、いわゆる「コロナ禍」と呼ばれる時代となった。しかしながら翌2020年にはボートレースの売上高はなんと2兆円に到達。コロナ禍をもろともせず成長したばかりか、2015年からわずか5年間で市場規模を2倍に拡大したのである(図表1参照)。

 「ボートレース」がネット投票に注力していることは知られており、それがコロナ禍における国民の生活様式にフィットしたことも指摘できるが、例えばJRA(中央競馬会)にも同様の仕組みかはある。従って、ボートレースだけが急激にファンを拡大した理由として、この点を指摘するだけでは不十分だろう。

 コロナ禍における国内経済に関しては「巣ごもり需要」を背景に、インターネットの利用時間が伸びたことが報告されている。具体的にはネットバンキング、ネットショッピング、動画視聴などがこれに該当するが、野村総合研究所の調査によると、「映像・音楽サブスクリプション配信サービス」の利用率は2019年12月から2020年5月にかけて、約2.3倍に増加したという。この類の調査結果は数多く公表されており、外出が制限される中、インターネットによる動画視聴を多くの国民が楽しんだということになる。実は、「ボートレース」の人気拡大の背景には、この動画視聴時間の増加が大きな影響を与えていると指摘する声がある。

 奇しくも現在、YouTubeで人気のボートレース関係のチャンネルは、多くが2017年〜2018年というコロナ禍直前に立ち上がっている。チャンネル登録者数26.4万人(2023年5月現在)の「ボーターズ」は2017年6月20日にチャンネルを開設している。
 また、ボートレースファンの間で広く知られているお笑い芸人「千鳥」の大悟さんの「4カドの峰は峰なんよ」というセリフは、2018年9月放送の「相席食堂」で発せられた。
 コロナ禍の巣篭もり需要を目の前にして、偶然にもインターネットやテレビを通じて、ファン拡大の機運が醸成されていたのである。

 さらに「ボートレース」には、「競馬」とは異なる初心者向きの競技特性があることも指摘しておきたい。「ボートレース」は6艇による競走が常であり、「競馬」のように多くの馬から着順を当てる必要がない。簡単に言えば6つの数字から2つ、あるいは3つを選んで当てれば良いというわけで、そもそも当たりやすいという印象がある。その上、基本的にはインコースが有利という分かりやすい競技特性があり、初心者でも馴染みやすい。
 男女混走が行われている点も目を惹く。1610名のボートレーサーのうち、253名(15.7%)が女性レーサーだ。男女双方にスター選手が存在するという点も興味深い。

 このように、「ボートレース」がコロナ禍において市場を拡大した要因は1つに絞り込むことができず、欠くことのできない複数の要因がタイミングよく重なったというのがここでの見解だ。ただ、初心者でも楽しみやすいという点は、ゲーム性が複雑化したパチンコ・パチスロとは異なり、ファンの裾野を拡げる上では大きくプラスに作用したように思える。

(月刊シークエンス2023年6月号寄稿分から抜粋)

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