今回は、ワールド・ワイズ・ジャパンが2024年10月に実施した「スリープ層の遊技欲求調査」から、40代・50代男性スリープ層の再遊技の可能性と、その際の予算イメージについて報告する。2024年のパチンコ・パチスロ市場は、ラッキートリガーの登場、スマパチの普及、スマスロの完全な市場定着など、スリープ層の〝最後の記憶〞から大きな進化を遂げている。そこで、現在の40代・50代の男性スリープ層に対してこのような現状を説明した上で、再遊技の可能性を問い掛けてみた。同時に再遊技時の予算についても回答を求め、彼らの再遊技時の予算を集計してみた。
40代・50代男性のスリープ率は26.8%
今回の調査は2024年10月21日に1200名の40代・50代一般男性に対して、インターネットアンケートにより実施した。まずはQ1として「昔は頻繁に参加していたが、現在は参加していないこと」として、パチンコ・パチスロを含む複数の娯楽を列挙して、それぞれに対して回答を求めた。回答結果は図表1の通り。
パチンコ・パチスロを選択したのは1 2 0 0 名の回答者のうち、26・8%に該当する322名。つまり、この年代の男性のスリープ率は26.8%ということになった。
参考までに比較対象として他の娯楽の結果を確認すると、最もスリープ率が高かったのはカラオケでスリープ率は27.9%。コロナ禍の影響や、若年世代の酒離れによる職場の飲み会の減少など、その理由を推察することはできるが、パチンコ・パチスロをしなくなった中年男性よりも、歌わなくなった中年男性の比率の方が僅かながらに高いというのは意外だ。ただ、そういえばカラオケ業界には近年活気が感じられず、まさにデータがこれを裏付けているという形となった。逆にスリープ率が低かったのは競馬などの公営競技と宝くじで、共にスリープ率は14.3%。オンライン投票など参加するための利便性が向上してり、スリープ率が低く抑えられているというのも理解できる。
再遊技参加を示唆するパチンコ・パチスロスリープ層の割合は24.8%
このようにして抽出した40代・50代の男性スリープ層に322名に対して、次は現在の市場における遊技機動向について説明文を確認させた上で、再遊技参加したいか否かを問いかけたのがQ2となる。説明文は次の通り。
現在のパチンコ・パチスロは昔から変化しており、その代表的なものをご紹介します。【スマパチ】玉に触れることなく遊べるパチンコ。出玉は自動でカウントされデジタル表示されるので、下皿がない。玉運びの手間がなく、手も汚れない。昔と比べて爆発力がある。【スマスロ】メダルに触れずに遊べるパチスロで、メダルを投入する手間がない。出したメダルは自動でカウントされデジタル表示されので、下皿には出てこない。手も汚れず比較的静か。昔と比べて爆発力がある。【ラッキートリガー】最新のパチンコ台の多くに採用されている仕組みで、大当たりの一部から大爆発するモードに突入する仕組みのこと。昔の台よりもはるかに爆発力と瞬発力がある。
以上の説明文を読ませた上で、再び遊んでみたいかどうかを尋ねた。回答選択肢は「気になるので遊んでみたいと思う」「少し気になるので、どちらかというと遊んでみたい」「少し気になるが、どちらかというと遊びたくない」「全然気にならないので遊ぶことはない」の4択。回答結果は図表2として掲載しているが、結果を俯瞰すると、少なからず再遊技参加に意欲を見せたのは回答者の24.8%。中でも「遊んでみたい」という明らかな意欲を示したのは6.5%という結果となった。逆に再遊技参加に否定的見解を示したのは回答者の75.・2%で、「遊ぶことはない」を選んだ明らかな否定派は54.2%を占めた。パチンコ・パチスロスリープ層が、遊技を中止した理由は様々だが、スマート遊技機やラッキートリガーというキーワードは、彼らの遊技中止理由とは〝別問題〞である可能性が高く、遊技機の面白さだけでスリープ層を掘り起こすというアプローチには限界がありそうだ。
しかしながら、時代の変化、特にスマホの普及や娯楽の多様化などを考慮すると、パチンコ・パチスロに限らず、そもそもすべてのスリープ層をそっくりそのまま掘り起こすという考えには無理があると言わざるを得ない。むしろ再遊技参加を示唆するパチンコ・パチスロスリープ層が24.8%存在するという事実を直視し、彼らにフォーカスした取り組みを考える方が随分建設的であるといえるのではないだろうか。
再遊技する場合の「予算」は?
さて、中高年男性スリープ層の24.8%に少なからず再遊技参加の可能性が感じられるわけだが、彼らが仮に再遊技参加する時に、果たしてどれだけの「予算」を組んでホールに出向いてくれるのだろうか。これを確認するためにQ3を用意した。Q3参加者は、Q2において「遊んでみたい」または「どちらかというと遊んでみたい」を選択した80人。回答結果は図表3として掲載している。
まず、最も多かった回答は45.0 %を占めた「1 万円ぐらい」。次いで「5 0 0 0 円ぐらい」が22.5%、さらに「2万円ぐらい」が16.3%となっているが、4万円以上の選択肢を選んだ回答者は存在しない。そのため、中高年男性スリープ層の再遊技参加時の予算上限は3万円程度にあるものと考えられる。
次に平均予算をイメージするために、これらの回答結果の加重平均値を求めてみたが、その結果は1万1725円となった。
参考までに、ワールド・ワイズ・ジャパンが10月に実施したヘビーユーザーの1回あたり予算調査では、その加重平均値は約4万円となっており、大きな乖離を見せている。
ちなみに、今回の調査では、パチンコ・パチスロ未経験者に対しても「仮にパチンコ・パチスロをするとした時の予算」を尋ねているが63.3%が「3000円ぐらい」と回答しており、加重平均値は4358円となっている。余談にはなるが1000円スタートが13回前後とも言われる昨今、4〜5000円ではなかなか大当たりを経験することは難しく、未経験者のためには1円パチンコという存在が業界には必須といえそうだ。
まとめ
2024年は冒頭で述べた通り、スマパチの普及、ラッキートリガーの登場、スマスロの浸透などファンにとっては遊技がより楽しくなる市場環境にあり、業界関係者としては参加人口減少に歯止めが掛かり、スリープ層の再遊技参加を期待したいところでもある。
今回は、メインユーザーと思われる40代・50代男性に限定しての調査となったが、少なからず再遊技参加を示唆する回答者の割合を把握するに至った。同時にその際の遊技予算についても確認できたため、これらをスリープ層に対するアプローチを検討する上での材料として参考にして頂ければ幸いだ。キーポイントは〝1万円で楽しめる〞ということになりそうで、ラッキートリガーやスマパチがヘビーユーザーのみならず広くファンをカバーしてくれることに期待を寄せたい。
ワールド・ワイズ・ジャパン 市場調査部 上席研究員 岸本 正一