「ぱちんこファンはどの程度の射幸性を好んでいるのだろうか」というシンプルな疑問が出発点となっている今回の調査。「当たりにくくても、当たれば爆発力のある台が好き」「爆発力は低くても当たりやすい台が好き」という二択では、見返り金額の度合いが今ひとつ見えてこない。そこで今回は宝くじを例に挙げ、当たりやすさと当選金額のバランスに対する一般男女500名の考え方を調査してみた。同時に、ギャンブルの好き嫌い、貯蓄の状況も問い掛け、それぞれの立場における考え方の違いについても分析した。例によってワールド・ワイズ・ジャパンの独自調査データをご紹介しながらレポートする。
◆当選が絶望的な1億円よりも、当たるかも しれない10 万円を選ぶ人が圧倒的に多い
今回の調査は2024年 11 月 21 日、500名の20代〜 60代一般男女に対してインターネットアンケートにより実施した。
最初の設問は「次の宝くじの中であなたが買いたいものはどれですか」というもの。回答選択肢は次の通り。
① 10万円が 10万人に当たる
②100万円が1万人に当たる
③1000万円が1000人に当たる
④1億円が100人に当たる
(注)すべて1枚200円とし、発売枚数は同じとする
どの宝くじも払い戻し総額は100億円となっており、当選金額と当選本数が異なっている。近年は宝くじの当選金額も高額になる傾向があるため、④が最も選択されるのではないかと予想していたのだが、回答結果は図表1の通りとなった。意外にも①を選択した回答者が49 ・2%と他を圧倒。この結果から、ほとんど当選が期待できない高額配当の宝くじよりも、少額であっても当選が期待できる宝くじを好んでいる人が多いということがまず判明した。
さらに「1万円が100万人に当たる」という選択肢を用意していた場合の回答結果も気になるところではあるが、ここでは当選金額の大きさだけでは参加者の心を掴みきれないということが明らかになった点を重視しておきたい。
その上で、ここからは回答者のギャンブルに対する考え方、現在の貯蓄状況についても質問を続け、クロス集計によりこれらが、先の質問の回答にどのような影響を及ぼしているかを見ていく。
◆ギャンブル好きの半数近くが100万円を選択、1億円は4人に1人という結果
ギャンブルに対する考え方につい ては、次の選択肢を用意した。
①好き
②どちらかというと好き
③どちらかというと嫌い
④嫌い
この回答結果と、先の回答結果 をクロス集計したものを図表2として掲載しておく。
まず、ギャンブルが「好き」「ど ちらかというと好き」と回答したのは全体の29 ・6%。約7割の回答者がギャンブルに対して否定的な見解を有しているようだ。
次に図表2のクロス集計結果を見ると、ギャンブルに肯定的見解を有する回答者の選択は、「10 0万円が1万人に当たる」というものであり、ギャンブル好きだからといって、「1億円が100人に当たる」を最も選択しているわけではないのだ。ギャンブル好きな人たちは、確かに全体でトップだった「 10万円」 よりも「100万円」を選んだという点、あるいは「1億円」を選んだ人の割合が全体平均よりも5・5ポイント高いということか ら、一般平均よりも射幸性を求め ているということは言えるが、高額であるほど良いというような単純なものではないということが集計結果から確認できる。
◆「貯蓄がない人」は一発逆転を狙う傾向が鮮明
最後に回答者の現在の貯蓄状況について質問した。貯蓄は預金の他に株式投資やその他の保有資産も含むとした。用意した選択肢は次の通り。
①十分にある
②多少ある
③あまりない
④ほとんどない
こちらも最初の設問とのクロス集計結果を図表3としてに掲載しておく。
集計結果で最も目を引いたのは、 貯蓄が「ほとんどない」と回答した人が「1億円が100人に当たる」を最も選択した点だ。選択者の割合は 54・5%にまで達した。これは当選確率が絶望的に低くても、それでも一発逆転を夢見るという価値観の表れといえるだろう。ただ、「1億円」の次に選択率が高かったのは「100万円」(33・3%)となっていることから、 貯蓄がない人が必ずしも一発逆転を狙う傾向が強いというわけではなく、確実にモノにしたい層との分断がより鮮明になっているというのが正しい理解のようにも思える。
【まとめ】
今回は宝くじを材料にして、当選確率と当選金額のバランスにつ いて、一般男女がどのような考え方を有しているかについて探ってみた。明らかになったのは、必ずしも当選金額が高ければ良いというのではなく、むしろ当たる確率をかなり意識しているということだっ た。
ぱちんこ業界について考えてみると、一時は遊技機の射幸性が大きく抑えられた時期もあり、これによりファンが離れたという意見があるのは周知の通りだ。しかしながら近年はその頃と比較して見違えるほど射幸性は高くなっており、 本来ならばファン人口が増加に転じても良さそうに思える。しかしながらそのようなトレン ドにない現状を考えれば、プレイヤーが最も求めている〝当選金額〞と〝当選確率〞のバランスに、現在の遊技機がジャストフィットできていない可能性があると言えるではなかろうか。無論、「10万円」はぱちんこでそう容易く獲得できる賞品金額ではない。しかしながら、「宝くじ」における10万円は、ジャンボ宝くじのような超高額な当選金額のものと比べると最もマイルドなものである。これを選びたいとする人たちの多さは、ぱちんこに置き換えるなら、甘デジや1円パチンコ等で遊びたいという意見に繋がりそうにも思える。
さらにもう1点。貯蓄がない人ほど可能性が極めて低い一発逆転を求める傾向が確認されたことにも注意したい。貯蓄がない人たちは経済的破綻を招く可能性がその他の人たちと比較して高いと考えられるため、仮にそのような事例が多くなれば社会問題化することは避けられないだろう。当選金額が数億円という宝くじのテレビCMが繰り返されている現状は、今回の調査結果を踏まえれば非常に危うい気もする。
いずれにせよ、今回の調査をベースにして、遊技参加者に対して改めて詳細な調査を行いたいと考えている。
ワールド・ワイズ・ジャパン 市場調査部 上席研究員 岸本 正一