超高齢化社会を迎える日本において、健康食品など高齢者をターゲットにしたマーケットは広がりを見せている。その一方で、パチンコという娯楽は「誰もが安心して遊ぶことのできる大衆娯楽」を目指しながらも、コロナ禍を経て、高齢者の遊技客を十分に維持できていないようにも感じる。「高齢者をもっと呼び戻さないといけない」と主張するホール経営者の声を何度も耳にすることはあるが、果たしてそこにどの程度の現実味があるのだろうか。
今回は60代男性1000名に対してアンケート調査を実施。「パチンコ」「公営競技」「宝くじ」のそれぞれについて、その「休眠期間」を探ってみた。
60代男性の約8割がパチンコ経験者〜経験率は公営競技の2倍近く〜
今回は60代男性1000名に対するインターネットアンケートを実施し、「パチンコ」「公営競技」「宝くじ」のそれぞれについて、〝最終参加時期〞の回答を求めた。同時に未験者も抽出しており、ここから経験率を算出できるようにしている。なお、本レポートにおいては「パチンコ」は「パチンコ・パチスロ」を意味しており、アンケートの設問にもその点を記載していることを予めお断りしておく。同様に「公営競技」は「競馬・競輪・ボートレース」、「宝くじ」は「ロト」「スポーツくじ」などを含むこととしている。
まず「パチンコ」の経験率だが、60代男性の77 .2%に遊技経験があることが分かった。未経験者は全体の22.8%。他方、「公営競技」の経験率は36.3%(未経験者が63.7%)。「宝くじ」の経験率は75.5%となっており、60代男性では「パチンコ」と「宝くじ」の経験率が「公営競技」のそれぞれ2倍以上になっているということが判明した。
最後にパチンコをしたのはいつ?〜パチンコの1位は「30年以上前」〜
次に、「パチンコ」「公営競技」「宝くじ」のそれぞれの経験者に対して、最後に参加した時期を確認した。例えば「10年前」であれば確実に離反者であると考えられるし、「3日前」であれば現在も参加中と判断できる。
回答結果は、「パチンコ」に最後に参加したのは「30年以上前」という回答者が48.8%を占めてトップ。同じく「公営競技」も「30年以上前」が30.3%でトップ、「宝くじ」では「30日以内」が21.1%でトップとなった。
「パチンコ」の30年前とは、「CR黄門ちゃま2」や現金機「春夏秋冬」の時代。60代男性のパチンコ経験者の半数近くが、その時代の遊技経験が最後のものとなっており、その後劇的な進化を遂げた遊技機での実体験を有していないのである。もはや、浦島太郎となった彼らは、恐らく最新の遊技機を目の前にすると、間違いなく狼狽えることだろう。
ちなみにこの回答結果をさらに「5年以上前」を条件にして再度集計すると、「パチンコ」は81.7%、「公営競技」は57.6%、「宝くじ」は41.6%となることから、「パチンコ」という娯楽は一度離れてしまうと、(「公営競技」や「宝くじ」と比較して)離反期間が長くなる傾向が強いということも分かる。
このような差が生まれる理由は、恐らく国民的イベントの有無に起因しているのではないかと筆者は考える。具体的には「公営競技」では「ダービー」や「天皇賞」、「宝くじ」では「サマージャンボ」や「年末ジャンボ」といった国民的イベントがある。これに対して、パチンコ業界には様々なイベントはあるものの、それが国民的と呼べるレベルには達していない。
年に一度だけでも参加するイベントがあるだけで、ファンはその娯楽から完全に離れることは随分回避できる。「パチンコ」でいえば進化する遊技機に取り残されにくくなるということだ。毎年行われている「パチンコ・パチスロファン感謝デー」はまさにその一翼を担うものである。今後さらに認知度を高めることより、ファンの完全離反を食い止めることは重要な課題ではないだろうか。
高齢化社会におけるパチンコ・パチスロの盛り上がりを期待したい。