
高齢層の休眠プレイヤーの実態
2022.11.5 株式会社ワールド・ワイズ・ジャパン 市場調査部
コロナ禍で減少した高齢層プレイヤーをホールに呼び戻したいという声がホール関係者の一部で聞かれる。パチンコホールの換気性能の高さと感染拡大防止対策は、広く一般に知られるようになってきたものの、実際の現場では一度離れた彼らが十分にホールに戻りきっていないという。 果たして、業界はコロナ禍で離れていった高齢層プレイヤーを呼び戻すこと、また、コロナ禍以前にすでに離反しているいわゆる「休眠プレイヤー」を、再びホールに呼び戻すことができるのだろうか。2022年7月に実施した独自調査データから、その可能性と課題について考えてみたい。
<60歳以上の男性の54.6%が「遊技経験」を有している>
調査は2022年7月1日に全国の60歳以上の男女500名(男性350名、女性150名)に対してインターネットアンケートにより実施した。最初に「これまでにパチンコ・パチスロで繰り返し遊んでいた時期(=遊技経験)の有無」について確認した。衝動的に一度だけ遊んだというケースは、「繰り返し遊技(=遊技経験)」の対象外とし、あくまで趣味や娯楽としてパチンコ・パチスロに興じた期間の有無について確認したものとなっている。その結果、60歳以上の男性の54.6%、女性の13.3%が遊技経験を有していることが判明した<図表1>。
<60歳以上の男性のパチンコ・パチスロ休眠率は85.3%>
遊技経験を有するこれら回答者に、現在のパチンコ・パチスロでの遊技状況を確認したところ、現在も遊技中である回答者は男性で14.7%、女性で25.0%となった。これにより、遊技経験を有するこれら回答者のうち男性の85.3%、女性の75.0%が「休眠プレイヤー」であることが分かった<図表2>。60歳以上のパチンコ・パチスロ経験者の大半が「休眠プレイヤー」と化しているのが現状のようだ。健康面や身体能力という点で70歳以上ともなれば、「休眠化」することが自然にも思えるのだが、60代に関してはまだまだぱちんこ業界としては顧客であり続けて欲しいところ。そこで、これらのデータをさらに60代に絞って検証することにした。
<60代の男性の休眠プレイヤーは約347万人と推計>
60代に限定すると、男性の56.0%、女性の16.3%が遊技経験を有しているという結果となり、さらにこれらの休眠率は男性で84.0%、女性で62.5%(女性は該当サンプル数不足により参考値扱い)となった。この値を総務省統計局の人口推計(2022年7月1日現在、概算値)と照合すると、その実数は、60代男性推計人口(737万人)×60代男性遊技経験率(56.0%)×60代男性休眠率(84.0%)=346万6848人となった。つまり、ぱちんこ業界が再遊技を期待したい60代のの休眠プレイヤーは、男性だけで約347万人存在していると推計される。
<本当にコロナ禍が影響しているのか>
60代男性だけで約347万人の休眠プレイヤーのどの程度が、コロナ禍を理由にパチンコから離反したのだろうか。この疑問を解消するために、さらに今回の調査では「遊技をやめた時期」についても確認した。すると、遊技経験を有している60代男性の9割近くが4年以上前にパチンコ・パチスロをやめており、コロナ禍の影響とも考えられる「3年以内」は11.1%にとどまっていることが判明した<図表3>。パチンコホールから見れば、コロナ禍により高齢層プレイヤーが大きく減少したと感じるのかもしれないが、実際にはコロナ禍を機にやめた人は1割程度であり、減少していると感じる理由は、彼らの遊技頻度の低下(来店回数の減少)にあると考える方が辻褄が合うことになる。
<高齢者がパチンコ・パチスロをやめる理由>
コロナ禍の影響を確かめるために、パチンコ・パチスロをやめた理由についても設問を用意したところ、その理由としてコロナ禍の影響は19.0%。選択率が最も高かった理由は「お金が掛かる」で79.4%となっており、遊技を継続する上で、その費用が彼らにとって大きな問題となっていることが窺える<図表4>。これに続く理由として、「時間が掛かる」(28.6%)、「新しい台の遊び方が分からない」(19.0%)となっているが、この結果を確認する限り、コロナ禍が突出して高齢層プレイヤーの休眠化に影響を与えたとは考えにくく、むしろ近年のパチンコ・パチスロの在り方が、高齢層プレイヤーの遊技スタイルを手厚くフォローするには至っていないことが指摘される。
パチンコでは一昨年頃からの重量級・高速消化系ハイミドル機やパチスロの6.5号機などが市場の人気を牽引している中において、静かに進行する高齢者の遊技離反はすでに60代男性だけで約347万人の休眠プレイヤーを生み出している。社会生活における価値観の変化や娯楽の多様化など、その原因は多岐に渡ると考えられるが、高齢層プレイヤーの維持・復活を期待するのであれば、今回の調査結果に対する何らかのアンサーを業界として提示する必要があるように思える。
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