
近年のパチンコ・パチスロ市場は、周知の通り、アニメ・漫画IP(Intellectual Property:知的財産)の活用を中心に展開している。市場規模の縮小、遊技人口の減少、若年層離れといった構造的課題に対し、IP導入は有効な打開策と位置付けられてきた。実際、主力タイトルの多くがアニメ原作を基盤とし、「IP主導型市場」とも呼び得る状況にある。
しかしながら、IP導入が実際にどの程度遊技行動に影響を与えているのかについては、定量的検証が十分とは言い難い。特に、「そもそも漫画・アニメに関心が高い層」において、IP機種(アニメ・漫画などのIPを利用して開発されているパチンコ機・パチスロ機)がどのように作用しているのかを分析した研究は限定的である。そこで今回、漫画・アニメ高関心層という明確な母集団を設定することで、IPの純粋効果を検証することを目的として調査を実施した。
調査概要
対象:全国の20代・30代男性 計2000名
調査日:2026年2月15日〜20日
調査方法:インターネットアンケート
①一次調査(スクリーニング)
2000名を対象に事前調査を実施。その結果、578名(28.9%)が「漫画・アニメに強い関心を持つ」と回答。
②二次調査(本調査)
上記578名を母集団とし、本調査を実施。有効回答523名。
IP機種の認知状況
漫画・アニメに強い関心を持つ層(以下「高関心層」)に対し、「あなたが好きな漫画やアニメが題材になったパチンコ機・パチスロ機はありますか」という設問を用意した。結果は、54.1%が「ある」と回答。高関心層に限定すると、過半数が(自分が好きな)IP機種の存在を認知していることが分かった。
実遊技経験
次にIP機種の存在を認知している283名に対し、「あなたはその台で実際に遊んだことがありますか」という追加質問を実施。その結果、64.0%が「ある」と回答した。
高関心層では、自分が好きなIP機種の認知から遊技行動への転換率が6割を超えていることが確認された。
回答者の日頃の遊技参加状況
最後に、高関心層が実際にどの程度の頻度でパチンコ・パチスロに遊技参加しているかを確認した。
まずは(自分が好きな)IP機種の存在を認知している283名の集計結果は次の通り。
・ほとんどしない:42.4%
・年に数回程度:11.7%
・月に1回程度:13.4%
・月に2回以上:32.5%
次に、(自分が好きな)IP機種の存在を認知しており、かつ、それで遊んだことがある人(181名)の集計結果は次の通り。
・ほとんどしない:10.5%
・年に数回程度:18.2%
・月に1回程度:20.4%
・月に2回以上:50.8%
まず注目したいのは、後者(181名)の内訳だ。「月に2回以上」という遊技頻度を“遊技習慣がある”とするならば、(自分が好きな)IP機種での遊技経験は、約5割の確率で“遊技習慣”に繋がるという仮説が成り立つ。これはIP機種を次々とリリースしているメーカーにとっては、その取り組みを後押しするものと言えるかもしれない。
しかしながら、彼らにそもそも“遊技習慣”があり、その中で(自分が好きな)IP機種で遊ぶという行動をとっているのであれば、話は少し違ってくる。「因果」と「選抜(セレクション)」の問題だ。論点を整理すると
・IP機種が“遊技習慣”を生み出したのか、“遊技習慣”がIP機種での遊技を誘発したのか
ということだ。
事実の整理から見えること
分析を深めるために、(自分が好きな)IP機種を認知しながらも、それで遊んだことがない「IP機種非遊技者」について日頃の遊技頻度を集計すると、驚くことに0.0%という結果が出た。これは単なる相関を超えて、IP機種遊技経験の有無と遊技習慣の間に極めて強い関連があることを示している。
ただ、これを「因果」と呼べるかどうか、慎重に整理する必要がある。
(自分が好きな)IP機種の存在認知が”遊技習慣”を生むのであれば、「IP機種非遊技者」にも一定の割合で習慣層が存在するはずだ。しかし、それがゼロである。つまり“遊技習慣のある人”は「IP機種遊技経験者」側にしか存在しない。
従って、IP機種での遊技経験は“遊技習慣”の必要条件に近く、IP機種での遊技経験なしでは習慣層は形成されていないことになる。さらに言うならば、これは必要条件ではあるが十分条件ではないと評価すべきだろう。
(まとめ)
・若年高関心層の遊技習慣形成はIP依存構造
・IP機種なしでの市場維持は困難
・オリジナル機のみでは習慣層を維持できない可能性
・しかしながら、IP機種を出せば必ず習慣化するわけではない
・習慣化設計(価格・体験・演出)が別途必要
※本レポートは月刊シークエンス2026年3月号に加筆修正を加えたものとなっている。




