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【寄稿】従来型娯楽産業の転換期(月刊シークエンス2025年12月号)

 現代の日本社会における「娯楽」の位置づけは、ここ数年で大きく変化した。コロナ禍を経て生活様式は大きく変わり、対面での消費行動やレジャー活動は一時的に停滞したが、2023年以降は徐々に回復の兆しを見せている。しかしその一方で、個人の余暇の使い方は多様化し、従来の娯楽産業が担ってきた役割は、必ずしもそのまま維持されているとは言い 難い。  
 今回ご紹介するデータは 20代から50代の3万人に対して実施したインターネットアンケート調査の一部であり、「週に1回以上楽しんでいる娯楽」を複数回答で取得したものである。ここから、現代の生活者がどのような活動を日常に取り入れ、どのような価値観のもとで余暇時間を過ごしているのか、その縮図を明確に捉えることができる。本レポートでは、これらの結果を材料に、現代人の娯楽の傾向と背景、そして今後の娯楽産業 について考察する。

3万人に実施した「日常の娯楽」調査結果

 調査はインターネットアンケー トにより2025年11月上旬に実施した。設問は「あなたが週に1回以上楽しんでいる娯楽を次の中からすべて選んでください(複数選択可能)というもの。  回答者が週1回以上楽しんでいる娯楽の割合は以下の通りとなった。
・パチンコ・パチスロ:2・8%
・ゴルフ(練習場含む):4・4%
・ウォーキング・ジョギング:22・0%
・サイクリング(1日20分以上の自転車乗車):4・2%
・競馬・ボートレースなどのギャンブル:3・3%
・カラオケ:5・6%
・動画配信サービス:16・5%
・この中にない:55・0%
 この結果は、従来の「娯楽」の枠組みを大きく超え、生活者の価値観がすでに新しい段階へ移行していることを示唆している。

◆ウォーキング・ジョギングが突出して多い理由
  22 ・0%という高い割合を記録 したウォーキング・ジョギングは、 もはや「娯楽」である以上に、生活者の健康意識の高まりを象徴している。コロナ禍を機に、日常的な運動習慣を取り入れた人は多く、「一駅分歩く」「散歩を日課にする」といった行動を意識する人が増えている。さらに、ウォーキングやジョギングは以下のような利点がある。 ①コストがほぼゼロ ・場所を選ばない ②一人で完結できる ③健康維持という明確な成果がある
 これらの要因が「週1回以上」 というハードルを容易にし、娯楽の中でも継続性の高いカテゴリーとなっていると考えられる。

◆サイクリングの位置づけ
 サイクリング(4・2%)はウォーキングよりも低いが、移動手段として自転車を活用する都市生活者 にとっては実質的な運動機会であ り、「運動目的を伴うライフスタイル型娯楽」として定着していると考えられる。

◆ 動画配信サービスの強さ
 週1 回以上視聴する人が 16・5%という結果は、娯楽の中心がすでに家庭内へ移行していることを強く示している。Netflix やAmazon Prime といったプラットフォームは、テレビ以上に個人の好みに合致するコンテンツを提供してお り、スマートフォンやタブレットでいつでも視聴できる利便性は圧倒的である。特に若年層ほど「自分のペース」「自分だけの時間」を重視する傾向が強く、動画配信サービスの利用頻度は年齢が下がるほど増加する。この構造は、娯楽産業全体が直面する「パーソナライズされた娯楽」への時代の変化を象徴しているように思える。

◆パチンコ・パチスロ:2・8%という低い数字
 かつて「国民的娯楽」と呼ばれたパチンコ・パチスロは、週1回以上という頻度で見るとわずか2・8%に留まる。これは、レジャー 白書などでも指摘されているように、プレイヤーの高齢化が進む一 方、若年層の流入が進んでいない現状をそのまま反映している。この背景には以下の要因が考えられる。 ①軍資金が必ず必要 ・遊技時間が長い ②店舗に足を運ぶ必要がある ③勝敗要素が強く、ストレスに感じる人も多い ④SNSや動画配信など他の娯楽の台頭。
 特に20代は「コストと時間に対して成果が見合わない」という認識が強く、気軽さ・手軽さが求められる現代の娯楽選びの中では不利な立場にあるように思われる。

◆競馬・ボートレースなどのギャ ンブル:3・3%
 オンライン投票の普及により間口こそ広がったものの、「週に1回以上」という高い頻度で継続している層は限定的である。エンタメ性の高いレース動画や予想コンテンツがSNSで注目を集めているが、それが必ずしも「自分で賭ける」という行動に結びついていない点は重要だ。

「この中にない」 55・0%という圧倒的多数が示すもの

 今回のデータで最も注目すべきなのは、「この中にない」が過半数となる55・0%という点である。これは、従来型の娯楽産業では説明できない新しい余暇行動が急激に増えていることを意味する。この中には、以下のような行動が含まれていると考えられる。
 ①スマホゲーム(ソーシャルゲーム) ②SNS閲覧/投稿 ③YouTube 視聴などによる細分化 された時間利用 ④家庭用ゲーム(Nintendo Swit ch、PS5 など) ⑤カフェ巡り ⑥推し活(ライブ・グッズ購入・ イベント参加) ⑦音楽鑑賞・配信ライブ視聴 ⑧料理・手芸・園芸などの個人趣味 ⑨ジムやフィットネス。
 これら、従来の「娯楽」カテゴリー に収まりきらない行動が、現代では主流となっているのである。
 現代の生活者は、昔のように何時間も店に行って遊ぶのではなく、 「5分・10分の隙間時間の利用」「他人の干渉がない」「コストが低い、または無料」という要素を強く求めるようになっており、旧来型娯楽の存在感を相対的に低下させているものと考えられる。特に「行く・ 遊ぶ・帰る」という移動が伴う余暇は特に若い世代にとって心理的負荷が高いようだ。
 今回の調査結果から、「店舗で楽しむ」「まとまった時間を使う」「ある程度の金額を支払う」という従来型の娯楽産業は、もはや主流ではなくなりつつあることが窺える。

(注)この原稿は月刊シークエンス2025年12月号寄稿文を一部加筆修正したものです。

 

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